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前回の記事の続きになります。

前回の記事

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今回の事件(前回の記事のリンク先ニュース参照)で,東京地裁が検察官に対して
被害者の氏名の記載につき補正を求めたのはどうしてでしょうか。

実は,この事件の弁護人は,起訴状に被害者の氏名を記載しないことについて同意している
ようです。
それにもかかわらず,地裁が認めなかったのは,氏名の代わりに記載した情報が
被害者の年齢の他,「被告が公園のトイレに自ら連れ込んだ児童」(記事原文ママ。
おそらく,「被告人が」であると思われます。)としか書かれていなかったからだと思われます。

これでは,「被告人がトイレに連れ込んだのは誰か?」という問いに対して,
「被告人がトイレに連れ込んだ人である。」と答えているだけで,何も答えていないのと
同じになります。
さすがに,この記載を認めてしまっては,被害者の特定を不要とすることになりかねず,
裁判所としても,被告人の最低限の防御権を侵害すると判断したのでしょう。
そして,この判断はやむを得ないものだと思います。

もっとも,じゃあ,代わりにどういう記載をすれば良かったのかと考えてみると,
これが非常に難しい・・・。

児童なのでメールアドレスも持っていないでしょうし,学校名を記載してしまうと,
特定される恐れが高いです。「○○市○○在住の~」と住所の途中まで記載する方法も
考えられますが,これでもやっぱり特定される恐れがあるでしょう。
東京地検としても,散々色々な方法を考えた挙句,どうにもいい方法が浮かばず,
やむを得ずそのような記載にして起訴したのだと思います。

他に方法があるとすれば,起訴状の別紙として被害者の写真を添付した上,
被害者を「別紙写真の人物」と記載することくらいでしょうか。

この事件では,被害者のご両親が氏名を出すのであれば,告訴を取り下げると
言っているようで,検察官が被害者の氏名を記載する補正に応じることはないと思われます。
このままだと,起訴が不適法であるとして,公訴棄却判決が下りてしまい,
被告人が裁かれることなく裁判が終わってしまう可能性すらあります。
社会正義の実現という観点からは,それもおかしな話です。

このニュースに接して,被害者保護という近年非常に重要になってきている要請と,
被告人の防御権の保障という古典的ながら,やっぱり譲れない重要な要請の相反する
2つの要請が拮抗する極めて難しい問題だなと悩んでしまいました。


そもそも,この問題は,刑事訴訟手続の根幹部分に影響する問題なので,
検察庁内部の取り決めや個々の裁判体の判断に任せるべき問題ではなく,
本来的には立法によって解決されるべきであると思います。

具体的には,①起訴状に被害者の氏名を記載しないことは認めつつ,その場合でも
裁判所と弁護人には氏名を知らせる,②裁判記録に被害者氏名を記載するが,弁護人以外の
閲覧謄写の請求には非開示とする,③弁護人が,正当な理由なく被告人に
被害者の個人情報を伝えたことに対して,刑罰等による制裁を設けるという方法が考えられる
と思います。

もっとも,こうしたとしても,被告人に被害者の氏名等個人を特定できる情報を伝えなければ,
適切な防御をすることができないような場合に,どうすればいいのかが問題となってくるので,
やはり一筋縄ではいかなそうです。

ともあれ,今後もこういった事態は頻繁に起こることが予想されるので,速やかな
法律の改正が望まれるところです。

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東京地裁が被害者の氏名を匿名にした起訴状を認めず,検察官に補正を求めているそうです。

東京地裁、児童わいせつ事件で被害者匿名の起訴状認めず

起訴状の被害者の氏名を匿名にした起訴状は,昨年の逗子のストーカー殺人を
きっかけに登場するようになったようです。
逗子のストーカー殺人では,犯人が殺人を犯す前に,警察が脅迫の容疑で逮捕した際,
逮捕状に記載された被害者の結婚後の姓と住所を読み上げてしまったため,
釈放後に殺人を犯すことが可能になったとされ,警察が社会からの強い批判を浴びました。

逮捕状や起訴状は,被疑者や被告人の防御のため,必ずその記載内容を被疑者・
被告人本人に伝えなければなりません。
そのため,そこに被害者の個人情報が書かれていると,被疑者や被告人にその情報を
知られてしまいます。

殊に,上記ニュースの事件のような通り魔的な性犯罪等の場合は,被疑者・被告人は被害者
の氏名や住所を知らないことが多いです。
それにもかかわらず,被疑者・被告人に氏名や住所を知らせてしまうと,二次被害を
及ぼす恐れもありますし,何よりも被害者ご本人に無用な不安を与えてしまうことにも
なりかねません。

そこで,被害者保護のために何とかしようと,検察庁が頭を悩ませた挙句に始めたのが
被害者氏名が匿名の起訴状なのです。

ここまで読むと,被害者氏名が匿名の起訴状に何の問題があるのかと思われる方も
多いのではないかと思います。


しかしながら,話はそう簡単ではありません。

刑事訴訟法256条2項には,起訴状には公訴事実を記載しなければならないと定められており,
同条3項には「公訴事実は,訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには,
できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない」と
定めらています。
つまり,起訴状には,起訴された被告人が「いつ,どこで,誰に対して,どのような方法で,
何をやり,結果としてどうなったか。」について可能な限り具体的に書かれていないと
いけないとされているわけです。

これは,裁判所に審判の対象となる事実を明らかにするという目的の他に,被告人に対して,
予め何をしたことで起訴されたのか明らかにして,防御の機会を与えることも目的としています。

たとえば,ゴルゴ13を,「被告人は,人を殺した。」という内容で起訴したとしても,
そもそも,ゴルゴ13は数限りなく人を殺してきているわけですから,どの殺人で起訴されたのか
分からず,反論することもできないことになってしまいます。
そこで,起訴状には上記のような記載内容が必要となってくるのです。

では,被害者の氏名を完全に匿名にした起訴状を許してしまうと,どういう弊害が
あるのでしょうか。

ここで,被告人Aさんが,被害者Bさんを殺害した事件で起訴されたとして,
その起訴状に被害者名が書かれず,被害者を特定する情報すら書かれていないとします。

もし,Aさんが同じ日時,同じ場所,同じ方法で,Bさんだけでなく,Cさんのことも
殺したという容疑がかかっていた場合,これでは,Aさんとしては,BさんとCさん
どちらを殺したとして裁かれているか分かりません。

AさんがBさんを殺したことを認めているが,Cさんを殺したことを否認していた
場合,被害者の氏名が匿名の起訴状だと,事実を認めるべきなのか,否認するべきなのか
判断もできません。
また,Aさんが被害者をBさんだと思い,事実を認めて判決が確定した後,実は,
先の裁判の被害者はCさんだったとして,もう一度被害者Bさんの事件について起訴される
危険もあります。

このように,被害者の特定がされていない起訴状では,被告人が様々なリスクを負う
ことになるのです。

そのため,検察庁は,起訴状の氏名を匿名にする場合,代わりに被害者を特定するため,
被害者のメールアドレスを記載したり,旧姓を記載したり,名前をカタカナで記載したり,
勤務先と名字を組み合わせたりして,色々と試行錯誤している状況のようです。


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ちょっと長くなってしまったので,二部構成にします。
続きは次回に!


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以前のブログで書いた非嫡出子の相続差別について
(以前の記事→ついに判例変更か?!(非嫡出子相続差別) ),昨日最高裁大法廷で弁論が開かれました。

婚外子相続格差で最高裁大法廷弁論

大法廷で弁論が開かれたことにより,最高裁が平成7年の判例を見直し,違憲判決を下す
公算が高まりました。

今,地味に興奮しています。

平成7年の判決の後も,各方面から問題を指摘されながら,放置し続けた立法の責任は重いです。


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テレビ等で有名な川越シェフが某ネット雑誌の取材で,某グルメサイトに書かれた
自身のレストランに対するコメントに噛み付いたところ,世間からの反感を買い,
炎上状態になっているようです。

川越シェフ発言の問題点を整理すると,以下のようになると思います。

①年収300万円~400万円発言は,低所得者層をバカにしているのではないか?
②水800円は,高いのではないか?
③客が注文していない水を提供して,課金することに問題はないか?

この内,①については,主観の問題かと思いますし,②については,判断するための
知識や資料もないので,言及しません。
法律家として問題を感じるのは,もっぱら③ですので,以下その点について書きます。


お店から飲食物の提供を受ける契約は,売買契約や賃貸借契約のように民法等に定められた
典型契約ではありませんが,一般的に「飲食物提供契約」と呼ばれています。
お店がお客さんから注文された料理や飲み物を提供し,お客さんがそれに対して
代金を支払う契約ですね。

そのため,原則としては,お客さんが注文しない飲食物をお店側が提供するということは
ありませんし,お客さんが注文していない飲食物の代金を請求されるということもありません。
たとえば,吉野家に行って牛丼を頼んだら,頼みもしない味噌汁が出てきて,お金を請求
されるということはあり得ないわけです(単純ミスを除く)。


もっとも,例外もありまして,居酒屋のお通しのように,頼んでなくても出てきて,
当然のように料金を請求され,代金を支払っているものもあります。
これは,居酒屋では,お通しが出てきて,その料金を支払うという一般的な認識がある
ことを前提に,お客さんがお通しを出されても,それを拒絶しなかったことによって,
お店側の飲食物提供の意思表示を,黙って承諾したことになり(「黙示の意思表示」
といいます。),契約が成立するからです(もっとも,出されたお通しを拒否できるか
どうかについては,ケースバイケースということになろうかと思います。
また,お通しについては,商慣習によるものであるという考え方もあるようです。)。

では,川越シェフのお店のように,注文されていない水を,店側が一方的に提供した
場合も,黙示の意思表示により契約が成立するのかどうかを検討すると・・・

まず,高級料理店において,お店側が水を出し,その料金を請求するということが
国民の間に一般認識としてあるかというと,う~んとなってしまいます
(勿論,高級料理店に頻繁に行く人ならば,当然のことなのかもしれませんが。。)。
むしろ,飲食店において提供される水は無料であるという一般認識すらあるのではないか
と思います。

とすると,飲食店が注文されていない水を一方的に提供して,お客さんが特に拒絶
しなかったとしても,黙示の意思表示による水の提供契約が成立したとは言い難いことに
なります。

もっとも,たとえ,契約が成立しなかったとしても,直ちに水の代金を支払わなくて
よいということにはなりません。

民法703条には「不当利得」というものがあり,法律上の原因なく利益を受けて,
他人に損失を与えた場合,その利益分を返還しなければならないと定められています。
そのため,800円の水を提供され,その水を飲んでしまったものは,800円を
支払わなくてはならないことになりそうです(その水に本当に800円の価値がある
かどうかについては,措いておきます。)。


しかしながら,民法1条2項には,信義則(「信義誠実の原則」ともいいます。)が
定められており,形式的には有効な請求であっても,それが一般社会通念に照らして
信義にもとるような場合は,そのような請求は許されなくなることがあります。

信義則の判断には何か定型があるわけではなく,そのケースごとの事情を総合的に
判断することになりますので,よっぽどひどい場合でもない限り,
結論を予測することは難しく,それはこのケースでも同様です。

ただ,上記のとおり,日本の飲食店では水に課金されることが例外であること,
店側としては,事前に水代を請求することを告知することが十分に可能であったこと,
水をサーブする際に何ら注意喚起をしなかったこと等の事情が重視されれば,
お店側がお客さんに水代を請求することが信義則に反すると判断される可能性も
あるのではないかなと思います。


もし,川越シェフから,このケースについて相談を受けたとしたら,
メニュー等のなるべく分かりやすいところに,「お水代として800円
いただいております。」と記載しておくようアドバイスするでしょうね。

でも,きっと高級店はそういうの嫌がるだろうな~とも思いますが。。



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