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中2の女子生徒がいじめを受けて自殺したと主張し,両親が女子生徒をいじめていた
とされる4人の同級生とその両親に対し起こしていた損害賠償請求訴訟の控訴審判決が
名古屋高裁でありました。

瑞浪中2自殺、二審もいじめ認めず 名古屋高裁判決

この事件,1審の岐阜地裁は,いじめの事実を認めず請求棄却判決としましたが,
高裁でもその判断が維持されたようです。

1年ほど前に出た1審判決を見たときも感じたのですが,この判決は,
弁護士を始めとする法律家からすると,やむを得ないもののように思えるのですが,
一般市民の方々からすると,ちょっと納得できないものかもしれません。


この判決に対する何とも言えない違和感が生まれるのは,女子生徒の遺書に
4人の同級生の名前が書かれていたことが主な理由のように思えます。

自殺者の遺書というものは,正に人が死のうとするその直前に書かれる
ものですから,そこに全くのでたらめが書かれているということは通常ないはずです。

ですから
4人の同級生が亡くなった女子生徒をいじめていたのは,
明らかではないか?!
なのに,どうして,判決はいじめの事実を認めないのか?!

という疑問が生まれるのだと思います。

しかしながら,このような民事訴訟では,通常訴えを起こす原告側に全面的に
証明責任が課せられています。

証明責任とは,大雑把にいうと,ある法律効果発生のための要件となる事実が
証拠によって証明されず,真偽が不明になってしまうと,その事実はなかったことと
されてしまい,訴訟に負けてしまう立場にいることをいいます。

そして,この事件のような不法行為にもとづく損害賠償請求の訴訟では,
原告は
・被告が原告の権利を侵害したこと
・その侵害行為が違法なものであること
・その侵害行為によって原告に損害が発生したこと
などの事実を証明しなければ,訴訟に負けてしまうことになります。

もし,これらの事実が十分に証明されていないのに,多額の損害賠償請求を
認めてしまったら,世の中裁判起こしたもの勝ちになってしまい,大変なことに
なってしまうからです。


しかし,遺書に4人の同級生の名前が書かれていただけでは,
亡くなった女子生徒が4人に対して嫌な感情を抱いていたことは分かりますが,
同級生達から具体的にどのような仕打ちを受けていたのかどうかは分かりません。

たとえば,多少嫌なことを言われたとか,冷たくあしらわれたということが
あったとしても,(それが「いじめ」に当たるかどうかは別として)
不法行為が成立するような「違法」な行為であったというのは難しいと思います。

ですから,裁判所としては,女子生徒が4人から何かをされており,苦しんでいた
ということまでの心証は取れたのかもしれませんが,具体的な行為について心証を取れずに,
侵害行為の証明がないとして,両親の請求を退けてしまったのではないでしょうか。

この訴訟では,他に生徒による無記名アンケートが証拠として提出されていたようですが,
どんな体裁で,どんなことが書かれていたか不明ですので,コメントは差し控えておきます。
ただ,一般的に,無記名のアンケートで何かを立証するというのは難しいのかと思います。

この結果に納得のいかない意見も多いと思いますし,それは十分に理解できます。

しかし,民事訴訟は,刑事訴訟と違って,「事の真相を明らかにする」手続というよりも,
私人間の紛争を解決する手続なのです。
そのため,真相がよく分からない場合も,裁判所は紛争解決のため,一定の判断をしなければ
なりません。
ですから,当事者の言い分が食い違う場合は,ある程度形式的に証明責任が果たされた
かどうかで判断せざるを得ない場面が出てくるのです。

一人の人間として,娘さんを亡くされたご両親のお気持ちを思うと,この結果に胸が痛みますが,
一人の法律家としては,こういう事件でも一定の判断せざるを得ない裁判官の心中もさぞかし・・・
と思ってしまいました。


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