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東京地裁が被害者の氏名を匿名にした起訴状を認めず,検察官に補正を求めているそうです。

東京地裁、児童わいせつ事件で被害者匿名の起訴状認めず

起訴状の被害者の氏名を匿名にした起訴状は,昨年の逗子のストーカー殺人を
きっかけに登場するようになったようです。
逗子のストーカー殺人では,犯人が殺人を犯す前に,警察が脅迫の容疑で逮捕した際,
逮捕状に記載された被害者の結婚後の姓と住所を読み上げてしまったため,
釈放後に殺人を犯すことが可能になったとされ,警察が社会からの強い批判を浴びました。

逮捕状や起訴状は,被疑者や被告人の防御のため,必ずその記載内容を被疑者・
被告人本人に伝えなければなりません。
そのため,そこに被害者の個人情報が書かれていると,被疑者や被告人にその情報を
知られてしまいます。

殊に,上記ニュースの事件のような通り魔的な性犯罪等の場合は,被疑者・被告人は被害者
の氏名や住所を知らないことが多いです。
それにもかかわらず,被疑者・被告人に氏名や住所を知らせてしまうと,二次被害を
及ぼす恐れもありますし,何よりも被害者ご本人に無用な不安を与えてしまうことにも
なりかねません。

そこで,被害者保護のために何とかしようと,検察庁が頭を悩ませた挙句に始めたのが
被害者氏名が匿名の起訴状なのです。

ここまで読むと,被害者氏名が匿名の起訴状に何の問題があるのかと思われる方も
多いのではないかと思います。


しかしながら,話はそう簡単ではありません。

刑事訴訟法256条2項には,起訴状には公訴事実を記載しなければならないと定められており,
同条3項には「公訴事実は,訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには,
できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない」と
定めらています。
つまり,起訴状には,起訴された被告人が「いつ,どこで,誰に対して,どのような方法で,
何をやり,結果としてどうなったか。」について可能な限り具体的に書かれていないと
いけないとされているわけです。

これは,裁判所に審判の対象となる事実を明らかにするという目的の他に,被告人に対して,
予め何をしたことで起訴されたのか明らかにして,防御の機会を与えることも目的としています。

たとえば,ゴルゴ13を,「被告人は,人を殺した。」という内容で起訴したとしても,
そもそも,ゴルゴ13は数限りなく人を殺してきているわけですから,どの殺人で起訴されたのか
分からず,反論することもできないことになってしまいます。
そこで,起訴状には上記のような記載内容が必要となってくるのです。

では,被害者の氏名を完全に匿名にした起訴状を許してしまうと,どういう弊害が
あるのでしょうか。

ここで,被告人Aさんが,被害者Bさんを殺害した事件で起訴されたとして,
その起訴状に被害者名が書かれず,被害者を特定する情報すら書かれていないとします。

もし,Aさんが同じ日時,同じ場所,同じ方法で,Bさんだけでなく,Cさんのことも
殺したという容疑がかかっていた場合,これでは,Aさんとしては,BさんとCさん
どちらを殺したとして裁かれているか分かりません。

AさんがBさんを殺したことを認めているが,Cさんを殺したことを否認していた
場合,被害者の氏名が匿名の起訴状だと,事実を認めるべきなのか,否認するべきなのか
判断もできません。
また,Aさんが被害者をBさんだと思い,事実を認めて判決が確定した後,実は,
先の裁判の被害者はCさんだったとして,もう一度被害者Bさんの事件について起訴される
危険もあります。

このように,被害者の特定がされていない起訴状では,被告人が様々なリスクを負う
ことになるのです。

そのため,検察庁は,起訴状の氏名を匿名にする場合,代わりに被害者を特定するため,
被害者のメールアドレスを記載したり,旧姓を記載したり,名前をカタカナで記載したり,
勤務先と名字を組み合わせたりして,色々と試行錯誤している状況のようです。


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ちょっと長くなってしまったので,二部構成にします。
続きは次回に!


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